トロログ

トロニーのブログ、略してトロログ。

「朗らかに」聞きました

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拝啓みなさん、トロニーです。大阪在住のトラックメイカーで鍵盤ハーモニカ奏者のゆnovationさんが、10月末に初のCD作品をリリースしたとのことですがいかがお過ごしでしょうか。タイトルは「朗らかに」。すでにAppleMusicやSpotifyなどでも配信されています。

 

朗らかに

朗らかに

  • ゆnovation
  • ポップ
  • ¥1650

music.apple.com

朗らかに by ゆnovation on Spotify

 

みなさんはもう聞きましたか?

 

うんうん…。

 

そうだよね…。

 

めちゃくちゃよかったよね…。

 

で、めちゃくちゃよかったので感想書こうと思います。

 

ゆnovationさんの音楽まだそんなに聞いたことない人は、これ読んでアルバム聞くか、これ読まずにアルバム聞くかしてください。何卒よろしくおねがいします。敬具。

 

要約

曲も詩もアルバムの構成も全部よく考えられていて、かなり完成度の高いアルバムでした!ゆnovation、あんたは偉い!

 

 

朗らかに

 

アルバムの表題曲にもなっている曲です。ピアノの和音と、次いでゆnovationさんの素直なボーカルが合わさって、朝露が降りるように静かに始まり、とか言ってたら楽しげなマンドリン(たぶん)をきっかけにお祭りの様相に。さまざまな音色が重なって騒がしくなりつつも、それぞれがいるべき場所にいる安心感*1

間奏が終わると、カラッとしたビートの上に再び和音とボーカル。コーラスが多彩に織り交ぜられつつ、マンドリン(ほんとか?)、時々ギター、トロンボーン、フルートなども参加。徐々にエスカレートする音の乗っかり方が楽しくて、聞いていて嬉しくなってしまいます。音色とタイミングがとてもよい。

 

短い曲ではありますが、歌詞も素敵。内容も前向きだし、描写が綺麗。窓の外の風景から少しずつ自分の手元にフォーカスが移動する、その視点の動かし方が上手いですね。今までの足跡と展望を、実感を持って胸張って捉えているんだな〜って勝手に解釈しました。

 

頼りなく揺れる今は
根をはり (互いに) 引き寄せあい
紡ぐ音と言葉は
どんな色を目指すことも朗らかに

(https://yunovation.bandcamp.com/track/-)

 

あと、「はるか遠くから照らす陽を背に」の読み方が「陽(よう)」なのとか、同じラインでもコーラスとボーカルで同時に別の歌詞を歌うのとか、曲に、そして結果的に歌詞世界にも深みを与えるような工夫がよかったです。とにかく、ゆnovationの言葉を使う感覚って本当に優れているんだなって、改めて実感。一曲目から沁みる〜。

 

 

roki store

去年の夏から配信していた曲ですね。やっぱりかっこいいな〜roki store。こんなにクールで締まりのある曲だっけ。もちろん元からいい曲なんですが、「朗らかに」からの流れで聞くことで、より魅力が増しています。これがアルバムってやつか〜。

 

非ボーカル曲です。メインはYAMAHA p-37Eというピアニカ。機材情報や歌詞はbandcampのページで見れます。要チェック。

 

あの〜、ゆnovationさんってピアニカ吹くのめちゃくちゃ上手じゃないですか?いやマジで今更なに?って話なんですけど、改めて聞くとしみじみ思っちゃうんだよな。抑揚が効いていて、豊かな音色。他の楽器の音もピアニカのために作用しているように聞こえてきて、なんというか、鍵盤ハーモニカ奏者としてのゆnovationさんの自己紹介のような印象があるんですよね。

 

ほかの曲もそうなんですけど、わりあい短めのフレーズで登場する楽器がめちゃくちゃいい働きをしています。この曲だと途中で挟まるギターとかフルートが気が利いてる。よくできた横スクロールアクションのステージ1みたいな、すべてがちょうど気持ちいい場所にある、そんなスムーズさ。

 

ちなみに、「roki store」というのは万博公園内の売店の名前。ジャケット写真に写ってる建物です。

roki store

roki store

 

「朗らかに」の歌詞に『千里』が出てきたり、大阪らへんの市外局番である「072」をEPのタイトルに冠したり…。土地に愛着を持てるところもグッとくるね…。

 

 

constant T

チャイムの音色がドリーミー。前2曲と比べるとテンポがややゆっくりだし、浮遊感があります。夢の中みたい…とか思ってたら「眠気とともに流されていく」や「ブランケット包まり寝ぼけるように居心地よくしよう」なんて歌詞が。

 

歌の曲ですが、始めの1/3は鍵盤ハーモニカがメイン。チャイムやフルート、ギターなど、差し音の入れ方が好きです。高音の楽器とピアノとベースとのバランスが取れていい感じ。途中、鍵盤ハーモニカの二重奏でハモったりしつつ、厚みを増した状態でボーカルにバトンタッチ。一音ずつを短く区切るような歌い方。ちょっとした押韻が結構細かく配置されているような。一つの文章を途中で分割するような歌い方も耳に残ります。言葉から意味が分離されていくような感覚がおもしろいな〜。なのに歌詞自体はパンチラインを連発するのがすごい。

 

今ならまだ許される無邪気を使い倒す 
隣り合うリアルと、いずれ背筋伸ばし襟正し
向き合うべき時が来るまでは

(https://yunovation.bandcamp.com/track/constant-t)

 

この居心地のいい環境にはいつまでも浸っていられないとは知りつつも、この瞬間が自分にとって大きな価値と意味を持つものだと実感している。その上で開き直るわけでも否定するわけでもなく、少しの自負を持って今を生きていく。そんな歌なのかな〜って思いました。自分もいま大学院生なので分かるような気がします(本当か?)。クレッシェンドするストリングの音で目が覚めそう。

 

 

town fair

 

なんて優しい曲…。なんというか、もう思い出の中でしか会えない大事な人に会えたような、そんな温かさを抱きました。心がほぐれていって、なんだか少し泣ける。おばあちゃん…。ウッウッ…。

 

いままで以上に鍵盤ハーモニカの魅力が伝わってくる曲。途中のドラムフィルからの鍵盤ハーモニカ二重奏が素敵ですね。かっこいいし可愛らしい。日常も祝祭も喜びも哀しみも込められているような音色に驚きました。後半、二重奏が解けて二手に分かれてからの展開もいいんだよな〜。ここが本当にね…少しずつ消えていく幻に追いすがるような、喪失感を抱きながら疾走しているような感覚でした。生で聞いてみたい曲です。

 

 

ある程度ある(朗らかにver.)

 

自分はもともと、072EPの「ある程度ある」をきっかけにゆnovationを知ったんです。なので、別バージョンが出ると知っても「果たして…」とか思ってたのですが…いや〜朗らかにver.もめちゃくちゃいいですね!ニッコリ!

 

072EPのほうはクラブの音楽的な、楽しくてワイワイしているノリがあったのに対して、朗らかにver.ではやや静かな印象です。ピアノと声だけで始まって、少しずつ楽器が加わっていく構成。最初の方は多少の緊張感があるんですけど、徐々にそれがほぐれつつ、でも最初から最後まで一本の筋が通っているような音のバランスがよかったです。特に、中盤からずっと鳴り続けるギターと、おなじみの鍵盤ハーモニカ、それと一緒に鳴らされるブラスがカッコいい。

 

それにしても、相変わらず「ある程度ある」の歌詞は凄まじいですね。この時代や世代を鮮烈に切り取ったようなリアリティがあって、それが少し怖い。特に、072EPver.は、曲調が賑やかで踊りやすいだけに、多少の皮肉や諦念が滲んでいるように聞こえたんですよね。ところが、朗らかにver.はそれが振り切れたような、前向きな曲に聞こえたのが印象的でした。

 

 

難波ナイトアウト御殿

 

なんとなくふてぶてしさのある鍵盤ハーモニカのメロディ。ドラムもベースも「ワシャゥォ〜〜〜〜ン」みたいなシンセも、ディスコ感たっぷり。ニヤッとしつつもノリノリで楽しくて、なんとなくPVが目に浮かぶようです。ネオンが、こうね…。この曲もギターがよかったな〜。ギター出てくる曲ぜんぶいい。

 

この曲、リアルタイムでは知らなかったんですけど、制作過程もおもしろいんですよね。アンケートを取りつつ制作するという手法だったみたいです。そんなんやっていいんだ…。デモを作ってはアンケートを取り、それを反映させてまた次のアンケートを取り…。複数のバージョンがあったみたい。今はもう過去のバージョンは聞けませんが、いずれすべて並べて聞けるようになると面白そう。

 

それにしても良い曲名。「難波ナイトアウト御殿」だって。

 

 

wannasing

 

名曲すぎ…。

 

ゆnovationのいいところ博覧会か?今までの曲の感想で書いてきたような、優れた言語感覚とか、鍵盤ハーモニカの音色、プレーンで筋の通った歌声、曲自体の構成や各楽器のアクセント的使い方、あとビートの気持ちよさやちょっとしたサンプリングのセンスなどが余すことなく現れている。アルバムの締めの曲として最適…。

 

自ら創作し発信することが「朗らかに」日々を過ごす力となるというのがこのアルバムのタイトルには込められているそうだけど、そこに高いクオリティを伴って説得力を与えているのが素晴らしい。何かを作ってみたい人、自分に自信を持てない人、心が折れてしまった人たちに勇気を与える歌詞。

 

切って貼ってmix upするだけだってクリエイティブ 素敵だね!
ママが毎朝作るお弁当だってそう

(https://yunovation.bandcamp.com/track/wannasing)

 

「ただ生活しているだけの人たち」だってクリエイターなわけで、そこに気がつけばもっとゆたかに、素敵に、朗らかに生きていけるんだって、そう背中を押してくれるような。些細なことだけど、生活に光を当ててくれるような。

 

just sing what you wanna sing, 透明な朝に
戸を開け踏み出す 勇気さえあれば
just do what you wanna do, 絶対にできる
光が差し込む 一瞬を信じ進めれば

(https://yunovation.bandcamp.com/track/wannasing) 

 

なんか分かんないですけど、県大会の2回戦の最終回、自分の送球ミスで負けてしまった日のこと思い出しました。3年生はここで負けたら引退が決まっていたのに、試合が終わってもだれも自分を責めなくて、なんなら笑って慰めてくれて、それが逆につらくて…。もう部活行けないな…でも野球やめたくないな…なんて思いながらトボトボ帰り道歩いていたんですけど、そのときにイヤホンから流れてきたこの曲で号泣しちゃったんですよね。そしてそれをきっかけに気持ちに区切りがついたんです。いつでもやめられるけど、それは今じゃないなって。誰よりも早くグラウンドに行って練習しようって。まぁ全部妄想なんですけども…。

 

そんな情景が頭をよぎるほど、素直なメッセージが込められている曲なのではないでしょうか。

 

 

 

 

終わりに

改めて、全曲とてもよかったです。それぞれの曲がどれもが高いクオリティでしたし、アルバム通しての流れも素晴らしかったです。曲調やテンポ、歌メインの曲とピアニカメインの曲とのバランスもよくて、本当に心地よい25分間。

 

そしてあっという間の25分間のアルバムなのに、それを超えるような深みや広がりがあるように感じるのはゆnovationの歌詞の力でしょう。「ある程度ある」で驚かされたのと同じくらい、いや、それ以上に心揺さぶられたような気がします。本当に言葉を使うのがうまいな〜って唸らされる(ブログもっと更新してほしい)。

 

ポジティブで楽しい、本当に素敵なアルバムでした。聞いていて勝手に励まされてしまうくらい。ありがとうございました。ぼくもがんばろっと。

 

 

 

 

↓特設サイト、いろんな人からのコメントがめちゃくちゃいいのでぜひ。

yunovation.net

 

 

 

↓ざっと全体の雰囲気がわかるのでぜひ。

soundcloud.com

 

 

↓手前味噌なんですけど、自分が同級生とやっているネットラジオ中トロラジオといいます)のOPをゆnovationさんに作ってもらっていて、その縁で一度出演してもらったこともあります。雑談しかしてませんが、この回とても楽しかったのでぜひ。

anchor.fm

*1:I'm a sophomore now!の冒頭の雰囲気と似てるな〜って思いました