トロログ

トロニーのブログ、略してトロログ。

手帳類図書室に行きました

 10月某日

 

参宮橋の手帳類図書室に行く。その名の通り、手帳や日記などが収蔵されたライブラリだ。と言っても私設の図書室である。個人が長年かけて集めた中から読みやすいもの、読み応えのあるものをセレクトして提供しているらしい。奇特な人もいるものだね。だが、共感である。人の私的な文章が読みたいという気持ちは本当によくわかる。本当によくわかるので読みに行きました。

 

 

表参道駅から8分ほど歩き、その場所に着いた。小さめのマンションを改築したアートギャラリー。手帳類図書室はその受付の奥にあった。想像していたよりも小さく、秘密めいている。受付の人に声をかけ、案内してもらった。何故か小声でなければいけないような気持ちになる。料金は1時間500円。ただし、今はリニューアルして1時間1000円に価格変更したらしい。その分集中して読めるようになったり、読める日記の数が増えたりしたとのことです。4つしかない閲覧席に誘導される。

 

一般的な図書館とは違って開架はない。閲覧机の上に置いてあるカタログから読みたいものを選び、それを受付の人に伝え、持ってきてもらうシステム。ざっとカタログを眺めて、婚活中の30代女性の日記を読むことに決めた。なぜなら自分も婚活中の30代女性なので…。

 

日記はジップロックの袋に入れられており、まるで証拠品のようだった。数年分の日記が一気に6冊渡される。とりあえず最初の一年分を開くと、いきなり歯医者の診察書が出てきた。どうやら、寄贈された時の状態のまま保存されているようで、貼られていた付箋や挟まれていた書類、メモなども一緒になっているようだった。診察書には名前や歯の治療の詳細が書かれており、一気にリアリティが上がる。人の日記を勝手に見ているのだという背徳感。実際は許可を得ているはずなのに。

 

中身を読む。当たり前だが、知らない人の連続した日々が書かれていた。忙しく働きつつ、時にお見合いをしたりデートをしたりする女性。当然ながら自分とは違う人生を歩んでいる。読めば読むほど、物語のような起伏も驚きもないことに気づくが、だからこそ読めば読むほどおもしろい。日記に登場する人物たちは、説明もなくあだ名で登場し、この女性とどういう関係なのかもよくわからない。自分のためだけに書いていたはずの日記を盗み見ているのだと改めて思い出してしまう。それを読めてしまうとは。ぼくは人のブログを読むのが好きなのだが、人に見せる前提、もしくは人に見られても構わない前提のブログとは違う弛緩と、それゆえの見る側の緊張感があった。文字字体もおもしろかった。その人ならではの字体、特にくずし字が見ていて飽きない。自分とは違う書き方の字を見つけるたびに何故か嬉しい。いくつか書き写してみた(が、全く特徴を捉えることができず残念だった)。

 

時間があっという間に過ぎる。途中、尋常じゃないくらい眠くなりうつらうつらしてしまったが、結局一時間半ほどでざっと6冊すべてに目を通し(最終的に結婚、そして出産していた。おめでとうございます)、返却する。もう一人分だけ借りて、それも一時間半ほどで読んだ。今度は男子大学生の日記、いやネタ帳だろうか。ラジオパーソナリティをバイトで?している人で、日々起こった出来事を、ラジオで話すために記録しているらしかった。偉すぎる。

 

退出することにはぐったりしていた。人の数年の人生をほんの3時間ほどで吸収したのだからそれはそうだろう。頭の中を突風が吹いたような感覚だ。なんだかあっけにとられてしまう。いろいろな人の日記や手帳が収められているから、最初はバイキングのように少しずつつまみ食いしようと思っていたのに、2人でも精一杯だった。他人の人生のボリュームと、他人の人生の記録をおもしろがってしまう自分の性を甘く見ていたのかもしれない。また行く。